ぎっくり腰

それは温泉ホテルの朝、突然やってきた。

私と友人のKは、朝食の前に風呂に行こうかと準備をしていた。

そこへ、車椅子の友人Mの奥さんから、夫が車椅子から落ちたので手伝ってほしいとたのまれた。

気軽に、M夫婦の部屋へ行き、3人で抱え上げようとしたそのとき、腰のあたりに経験したことのない、激痛が走った。そばにいたKはブチッと音が聞こえたという。

必死に3人でMを車椅子に抱え上げたあと、立っていられず、木の床に転がり込んだ。

KもMの奥さんもぎっくり腰の経験者で、いろいろとアドバイスをくれる。

このままM夫婦の部屋に転がっていても仕方がないと思い、とりあえず必死の思いで歩いて、自分たちの部屋に戻り、床の上に寝転んだ。

Kにはせっかくだから風呂に行くように進め、横になっていたが、途中から呼吸に若干の切迫感を感じ、寒さを感じた。なんとか、掛け布団を引き寄せようとするがそれすらもつらい作業だ。

Kが風呂から戻り、Mの奥さんも心配して見に来てくれる。とても、朝食に行けそうもないので、皆に朝食に行くように勧め、いろんなことを考える。

山登りが趣味で、結構重いものを背負って山を歩いていた。腰に不安を感じたことはなく、自分のからだは頑丈だと思っていた。71才の今でも、ウオーキングが大好きで1万歩くらいは普通、テレビを見るときにもストレッチのような運動をひんぱんにやっている。要するに自分がぎっくり腰になるなんて、思ってもいなかった。しかし、やってしまった。無警戒で不用意であった。中腰で持ち上げようと力を入れてしまったのがすべてだろう。後悔しても、現実の前にはどうにもならない。

予定では、今夜の飛行機で青森空港から新千歳空港経由で札幌に帰ることになっているが、帰るのは難しいかもしれないと考えたりする。なんとかからだを動かそうとしてみるが、背中の真ん中あたりの深部が発信地の痛みで、からだを左右にねじることも、上下に動かすこともできない。

そんなことをしているうちに、皆が朝食から帰ってきた。そそくさと終えて戻ってきてくれたのだろうという速さだった。Mの奥さんが、救急車を呼ぼうという。救急車に乗ったことはなく、想像するだけで恥ずかしさが先に立ったが、そんなことをいえる状況でもなかった。ホテルのフロントから救急車をよんでくれた。

自分ではなにもできない。Kに頼んで衣類と荷物をまとめてもらい、検査に便利だということでホテルの作務衣を着たまま救急車に乗ることになった。

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